中野こども病院 小児外科 

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胃軸捻転症

ポイント:新生児、乳児早期の腹満、ミルクの嘔吐、げっぷがへた。2−3ヶ月で自然軽快
 新生児期の胃軸捻転は、生直後から発症し、腹部膨満、ミルクの嘔吐、げっぷがへた、頻回におならをする、寝かすと不機嫌などが症状。嘔吐のないこともある。新生児・乳児健診などでよくみられる。肥厚性幽門狭窄症、ヒルシュスプルング氏病を疑われて小児外科に紹介されることが多い。
 
生後まもない新生児は、ミルクを飲むとき空気を飲み込みやすく(呑気、空気嚥下)、げっぷのが上手く出来ない。くわえて胃の固定がいまだ不十分で動きやすい。飲み込んだ空気は、げっぷとして排出されないと、腸管に移動すると、腸管は拡張し、腹満を生ずる。拡張した腸管は胃を上方へ圧迫する。固定が悪いと、胃が捻転し、胃が食道を圧迫するため、さらにげっぷが出しにくくなる。無理に出そうとしてミルクを嘔吐する。おならは頻回に出る。寝かすと苦しいので機嫌が悪く、ずっと抱いていないといけないことが多い。問診では、げっぷが出にくいことが特徴。

X線写真で、腸管に多量のガスが貯留しており、胃は小さいか見えない。胃の拡張のある肥厚性幽門狭窄症と区別がつく。
 腹部は緊満し、X線写真でのガス貯留で、ヒルシュスプルング氏病が疑われるが、四六時中おならが出ていることから区別がつく。便通も良好である。胃透視で典型的には、図の様な逆α型に捻転した胃を呈するが、単なる圧迫だけということも多い。
 胃軸捻転症と言うが、この病態は、胃軸捻転が原因でおこると言うより、呑気とげっぷが下手という新生児特有の状態からおこり、胃軸捻転は状態を悪くする要素と考えられる。

治療
1)でにくいが、なんとかげっぷを出す努力をする。
2)哺乳直後の腹臥位
3)少量で回数で哺乳させる
4)浣腸でガスをはやめに出す。

 新生児、乳児早期のこの病態は、体重が増えておれば、まず問題ない。ほとんどは、生後3ヶ月までに胃の固定に伴い、げっぷも出やすくなって、自然に治癒する。

 2歳以後の年長児でも、このような児を見かけることがある。年長児の場合も、何らかの原因で呑気がベースにある。胃軸捻転を伴うときと、伴わないときがある。長期的な内科治療で軽快してゆくが、たまに胃軸捻転に対し手術(胃固定術)をしないと行けない症例もありうる。

 


参考文献:
 松川泰廣: 新生児・乳児期の胃捻転について.大津市医師会誌, 23: 4-9, 2000.
 松川泰廣:腹満の原因としての胃捻転 1歳以下の胃捻転37例の検討.日小外会誌 37: 640, 2001.
 松川泰廣: 激烈な腹満をきたした新生児胃軸捻転症の1例.日小外会誌 39: 1011, 2003.
 松川泰廣: 小児外科医Dr.まつかわの母親が気づきやすい気にしやすい子どもの病気と対応(第6回) 胃軸捻転症、げっぷの話. こどもケア 7(2): 97-101, 2012.

中野こども病院 小児外科 松川泰廣

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