中野こども病院 小児外科 

>>トップ   >>医師編  >>家族編  >>病院紹介  >>著者紹介 

このページは医師への説明です。ご家族への説明はこちらをクリック。

リンパ管腫

治療方針:嚢胞状か、海綿状か?MRIが必須。嚢胞状リンパ管腫は硬化療法が有効。海面状は治療困難。

リンパ管腫は、基本的に良性の腫瘍である。悪性変化することは少なく、年齢的にはほとんど増大せず、身体が大きくなるとかなり目立たなくなる傾向にある。体のどこにでも発生する可能性があるが、頚部、腋窩などに多い。体表面にあると美容上の問題がある。腫瘍内への出血や感染で、急に腫大することがある。頸部のリンパ管腫は呼吸障害をきたす可能性がある。リンパ管腫は、組織学的に嚢胞状リンパ管腫と海綿状リンパ管腫に分かれる。両者が混在する場合が多い。治療法、治療効果は2者で全く違う。

検査
MRI検査が、リンパ管腫の診断・治療に必須である。リンパ管腫かどうかの同定、嚢胞状・海綿状の区別、腫瘤の広がりを確定できる。リンパ管腫は筋層など周囲組織に浸潤性に広がっており、外観よりもずっと広範囲であることが多い。とくに海綿状リンパ管腫の広がりの同定にMRIはかかせない。

治療
リンパ管腫は、やみくもに手術を考えるべきではない。広範囲であることと、周囲組織を巻き込んでいるため、筋層、神経、血管などの副損傷の危険が多分にあり、切除はかなり難しい。また全部を取りきれるものでもない。
 嚢胞状リンパ管腫には、薬剤(OK432等)の嚢腫内に注入による硬化療法が効果的である。手術はまずやらない。多胞性の場合は、時間をおいて硬化療法を繰り返しおこなう。かなりの縮小効果が期待でき、ほとんどわからなくなることもある。嚢胞状リンパ管腫は、出血や感染で、腫瘍が急に増大することがある。このときが逆に硬化療法のねらい目で、嚢腫腔が大きくなっているため薬剤の注入がやりやすい。抗生剤で炎症をおさめて少し小さくなった時点で、腔内にOK432(ピシバニール)を注入する。
 海綿状リンパ管腫には、現在でも有効な治療法がない。硬化療法はほとんど効果がない。手術も、広範囲に周囲組織を巻き込んでいることが多く、危険を伴う。良性腫瘍であり、ためらわざるをえない。呼吸障害など生命に危険のある場合は腫瘍容積を減らす手術を考えることもある。
 混在型リンパ管腫には、嚢胞状リンパ管腫の部分に硬化療法をおこなう。 嚢腫腔が小さくて薬液の注入が難しいこともあるが、上記のように、出血、感染などで腫大したとき炎症が治まって直後に注入すると入りやすい。


 参考文献:

中野こども病院 小児外科 松川泰廣

copy all right reserved (c) 2015. Medical Design Works