中野こども病院 小児外科 

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停留精巣、Nonpalpable testis

治療方針:1歳前に精巣固定術をすませる。1歳すぎると固定し自然下降はまずない。

停留精巣
 生殖能力の保持と、精巣の癌化の点から停留精巣の手術時期を考える。Leydig細胞の変性が1年で始まり
、精母細胞の変性が生後2年ごろからはじまるとされる。生殖能力の保持の点からは早めに手術するのがよい。性ホルモンの検討からも2歳前には手術することが望ましい。精巣の自然下降は生後1歳までにおこるといわれているが、実際見ていると、未熟児では自然下降が見られるケースがあるが、成熟児では下降はほとんど見られないようである。以上の点を考慮して、われわれは1歳前後を手術時期としている。10歳以上の停留精巣、特に腹腔内精巣は、癌化の可能性も指摘されている。精巣腫瘍の10%が停留精巣由来である。

精巣の位置

 精巣の位置は触診と超音波所見で判定する。鼠径管外停留精巣は触診できる。この位置の停留精巣は精巣固定が容易である。鼠径管内の停留精巣は、触診できないが、超音波で描出できる。触診不能かつ超音波で描出不能となると腹腔内精巣あるいは精巣無形成あるいはvanishing testisを考える。

手術と予後

 手術は、鼠径管を開き、精巣動静脈・精索を注意深く残して、鞘状突起を剥離し根部で閉鎖する。精巣を陰嚢内に引き下ろし、陰嚢の皮下に固定する。あくまで、精巣を良好な部位におくことが手術の目的である。もともと未熟なために通常の精巣下降が起こらなかった可能性もあり、手術しても精巣機能が回復するかどうかはわからない。

Nonpalpable testis (腹腔内精巣?vanishing testis?)

 精巣が触知できない場合、Nonpalpable testisという。腹腔内精巣かvanishing testisか鑑別する必要がある。腹腔内精巣の診断にMRIが有効との意見もあるが確実ではない。腹腔内精巣は、放置してはいけない。手術してでも確認すべきである。腹腔鏡で直視下に確認する。腹腔内精巣なら、年齢により、摘除あるいは引き下ろして精巣固定を考慮する。vanishing testisは摘除する。


遊走精巣

 精巣を陰嚢下極までひきおろせるが、刺激で挙上しやすいものをいう。家族には24時間のうちどれくらいの挙上しているのかを観察してもらう。おふろや、寝ているときに陰嚢内に下がっているなら、ほぼ問題はない。ほとんど挙上しているようなら停留精巣に準じて手術を考えるが、手術が必要な例はかなり少ない。両側遊走精巣で高度の場合は、機能温存の意味から手術を柔軟に考えるようにしている。


 参考文献:

中野こども病院 小児外科 松川泰廣

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