中野こども病院 小児外科 

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女児鼠径ヘルニア

治療方針:1歳以下は70%が卵巣の脱出である。卵巣は嵌屯しても、壊死に陥る危険は少ない(ただしゼロではない)。1歳以上は腸管脱出なので早めに手術する。

女児の鼠径ヘルニア:卵巣の脱出、嵌屯

女児では、新生児期・乳児早期には、腸管以外に卵巣を脱出がおこる。触診上は、卵巣はコリっとした帰納感がある。一方、腸管は、グシュっとした帰納感である。卵巣は、始めのうちは、小指の半分くらいの大きさで、押すと腹腔内にもどり、手を離すと脱出する。そのうち、卵巣が水腫を形成し腫大するため、鼠径部に小指頭大程の非還納性のしこりとして触れるようになる。しこりは外鼠径輪を中心によく動く。これが卵巣嵌屯である。小児科から、よく鼠径部リンパ節腫脹といわれて紹介を受ける。
 卵巣の嵌屯と腸管の嵌屯の鑑別は次の3点である。まず触診。コリコリとした少し可動性をともなうしこりが卵巣嵌屯、圧痛を伴い固く動かないしこりが腸管嵌屯である。第2点。腸閉塞を伴なわず全身状態が良好なのが卵巣嵌屯、腸閉塞を伴い全身状態が不良なのが腸管嵌屯である。第3は超音波検査である。卵巣の場合均一な充実性のエコー像を呈する。
 卵巣は嵌屯しても、腸管の嵌屯のように壊死をおこす危険は少ないが、ごくまれに捻転で壊死をおこすこともある。卵巣嵌屯は緊急手術の必要はないが、準緊急で手術を考える。
 女児の鼠径ヘルニアでは、脱出臓器は1歳までは卵巣の脱出が70%と高率である。卵巣脱出は、5歳くらいまではおこりうるが、1歳をすぎるとほとんどみられなくなり、男児と同じく腸管の脱出が主となる。


 参考文献:
 松川泰廣他: 女児鼠径ヘルニア卵巣嵌屯・脱出の年齢分布.日小外会誌 41: 694, 2005.

中野こども病院 小児外科 松川泰廣

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