治療方針:ほとんどは自然軽快。何もしない。4歳前後からまずはストレッチ療法。手術はほとんど必要ない。繰り返す包皮炎も手術しない。埋没陰茎もストレッチ療法でよくなる。唯一手術の必要な包茎は、BXO(barasitis xerotica obliterans)のみ。
真性包茎、仮性包茎
仮性包茎、真性包茎という言葉がある。仮性包茎とは、普段は包皮がかぶっているが脱転でき亀頭が露出できる状態をいう。包皮を切除する慣習のない日本では、日本男性のほとんどはいわゆる仮性包茎の状態にある。仮性包茎は日本人のペニスの正常の状態である。そもそも仮性包茎という言葉は日本にだけある用語で外国にはない。勿論、治療の対象ではない。
包皮が脱転出来ず、亀頭が露出できない状態を真性包茎という。包茎とは真性包茎の事である。包皮が脱転出来ないのは、包皮の包皮口の部分が硬くて短いためである。
新生児は全例包茎である。何歳までにめくれないといけないという基準はない。
包茎の治癒
包茎の治癒とは、包皮口の狭窄部が伸びるということである。方法は3つ。
1)自然に伸びるのを待つ:何もしないということ。何もしなくても20歳までには、98%が自然治癒すると考えられている。私は、0-2歳は何もせず自然に任せる方がいいと考える。
2)ストレッチ療法:この治療が主体。時間はかかるがほとんどの包茎はこの治療で脱転可能になる。4歳前後で来院すればこの方法をまず勧める。やるなら医師の管理下でやるべきである。
3)手術:以前は、常識的な考え方にのっとり、包皮炎を繰り返すものや、埋没陰茎や、排尿時のバルーニングなどは手術対象として説明していたが、ストレッチ療法でほぼ全員解決するので、最近は手術していない。唯一の例外はBXO(barasitis
xerotica obliterans)型の包茎である。何歳なら手術をすべきという基準はない。
包皮炎
包皮が炎症をおこし、疼痛、腫脹などをおこす。年齢的には、おしめをしている乳児期にはなく、1歳半以後で見られる。児のアクティビティーが増し、外で遊んでそのままの手で触って包皮が炎症を起こすようだ。抗生剤の内服、抗生剤軟膏で容易に治癒する。手洗いの奨励が重要。
常識的には包皮炎の主原因は包茎と考えられているが、主原因は汚いままの手で触ることで、包茎が解消した状態でも、包皮炎はおこる。手術よりも手洗いの奨励が大事である。
埋没陰茎(小さくみえるペニス)
Micropenis(矮小陰茎)と埋没陰茎は違う。Micropenisとは内分泌異常などで実際にペニスが小さいものであり。埋没陰茎とはペニスは正常の大きさなのだが、小さく見えるペニスを指す。つまむと、ペニスの長さ・太さは年齢相応に正常である。
この二つは厳密に区別しなければならないが、micropenisは内分泌異常や遺伝子異常を伴い、一般外来に突然来院することはほぼ100%なく、ペニスが小さいとの悩みで来院する児は全例が埋没陰茎であると考えてよい。
一般的には、埋没陰茎は、ダルトス筋膜の付着異常など発生学的異常が原因とされ、手術適応とされ、手術をやっている施設がほとんどである。私は、埋没陰茎に、手術ではなく包茎のストレッチ療法を実施してきた。40例近い症例で、全例がストレッチ療法で脱転可能となった。脱転後の長期の観察では、2次性徴期に入ると、ペニスの成長に伴いペニスは前に突出してくる。
私は、埋没陰茎は包茎の延長上にある疾患で、包皮部分ではなく陰茎の基部の皮膚部分が短いため、ペニスが埋もれて小さく見える状態ではないか、と考えている。もっとも狭窄の程度は普通の包茎よりきつい。
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