中野こども病院 小児外科 

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肥厚性幽門狭窄症

治療方針:生後2週から2ヶ月の病気。腹部X線写真で胃の拡張像。超音波検査で確定診断。手術がてっとり早い。

 生後14日目ごろからミルクの嘔吐があり、体重減少、ぐったりする、などの症状で来院する。以前は、幽門腫瘤の触知が診断のポイントとされていたが、腫瘤の触知は、脱水でぐったりした乳児では触知できるが、元気に泣いている乳児では難しく、実際には、意味がない。ミルクの嘔吐の児は、まず腹部単純X線写真を撮ること。胃の拡張があれば肥厚性幽門狭窄症を考え、胃の拡張がなく腸管ガスの貯留があれば胃軸捻転を考える(胃軸捻転の項)。確定診断は超音波検査による。胃の造影検査は不要である。
 肥厚性幽門狭窄症では強い脱水、低クロール性アルカローシスという特異的な電解質異常がおこるので、診断が確定すれば入院治療が必要である。胃ゾンデを挿入し持続吸引とし、絶飲とする。脱水、アルカローシスの有無をチェックし是正する。
 手術は
幽門筋切開術(Ramstedt手術)。術後早期からミルクをよく飲むようになる。腹腔鏡手術もやられるが、幽門筋切開という手術の基本は変わらない。臍内切開で手術すれば、小開腹でも創はほとんど目立たない。重要なのは創の大きさではなく、確実で安全な手術である。
 最近は、
硫酸アトロピン療法(最初静注、外来で内服)を積極的にすすめるドクターもいる。長期入院治療を要するなどコストベネフィットの点からも小児外科医としては手術をすすめる。
 なお、先天性の疾患ではないので、先天性肥厚性幽門狭窄症という言葉は使わない。


 参考文献:
 松川泰廣 他: 肥厚性幽門狭窄症の手術に関する一工夫(バブコック鉗子による腫瘤引き出し法).日小外会誌29: 1346, 1993.
  松川泰廣 他: 肥厚性幽門狭窄症に対するアトロピン療法.小児外科 40: 1324-1327, 2008.

中野こども病院 小児外科 松川泰廣

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