中野こども病院 小児外科 

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肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)
赤ちゃんがミルクをはく(その1) 


吐いたものは、胆汁ですか、ミルクですか?  

 赤ちゃんが何か吐いたとき、まず、吐いたものをしっかりみてください。ミルクですか?それとも胆汁ですか?吐いたものが緑色ならそれは胆汁です。胆汁嘔吐は何らかの病気で腸が通りにくいときにおこり、緊急で手術が必要です。早急に医師に相談して下さい。胆汁嘔吐で最悪な事態は腸捻転で、遅れると腸全体が腐ってしまうことがあります。

ミルクを吐くなら

 一方、ミルクを吐いたときは、どうでしょう。実はミルクの嘔吐は急を要さないことが多いのです。ミルクの嘔吐は、胃に問題がある場合におこります。小児外科医は、胃軸捻転、肥厚性幽門狭窄症、胃食道逆流症の3つを考えます。小児科医はその他にミルクアレルギーなども考えます。肥厚性幽門狭窄症や胃食道逆流は、年間数えるほどしかありません。私は新生児のミルクの嘔吐のほとんどは胃軸捻転ではないかと思っていますので次の項で説明します。

ミルクの嘔吐とげっぷとの関係

 ミルクを吐くことを、ドクターや保健婦さんに相談すると、ミルクの飲ませ方が悪いですね、げっぶをしっかり出して様子を見るように、と指導をされます。赤ちゃんってミルクを飲むときに同じくらいの量の空気を飲み込むんですね。だから授乳の直後にげっぷを出してあげないと胃が張ってミルクを吐きやすいのです。赤ちゃんを、うつむせになるくらいにお母さんの肩に抱き上げて背中をとんとんたたいて、げっぷを出してください。確かにこういう工夫で多くの赤ちゃんは次第にましになってゆきます。(私は、こんな状態を胃軸捻転症と考えています。)

体重が増えないときは要注意、必ず再受診を!!!

 しかし安心してはいけません。ミルクの嘔吐には、肥厚性幽門狭窄症という病気も隠れています。ドクターに、様子を見るようにといわれても、嘔吐が続くとか、ひどくなるとか、体重が増えないとか、体重が減るときは、必ずもう一度早くドクターを受診して下さい。特に体重減少は危険信号です。

さて、肥厚性幽門狭窄症です

 肥厚性幽門狭窄症は、生後2週間頃から2ヶ月の間の期間限定型の病気で、胃の出口(幽門)の筋肉が一時的に分厚くなって胃から十二指腸への通過が悪くなるためにおこります。あかちゃんは、ミルクを吐いた後、すぐ欲しがり、飲むとまた吐きます。時には噴水状に吐いたり、鼻からミルクが出てくることもあります。時間がたつと、胃が異常に拡張し出血をおこして、吐物が黒っぽくなったり、血が混じるようになります。こうなるとお母さんはノイローゼ気味、赤ちゃんは脱水と、母子共にぐったりして病院に来られます。
 診断は、1枚のX線写真と、超音波検査です。肥厚性幽門狭窄症では脱水、電解質異常がひどいので必ず入院治療が必要です。治療は手術か薬物療法です。手術が簡単で確実です。直後から嘔吐はなくなり嘘のように飲むようになります。最近は硫酸アトロピン療法もおこなわれていますが、治るまで時間がかかります。ドクターとよくご相談下さい。


中野こども病院 小児外科 松川泰廣

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