中野こども病院 小児外科 

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臍ヘルニア、臍肉芽腫、臍ポリープ

治療方針:1歳までに95%治癒。1歳以後は不変で手術が必要。

 臍脱後2週間頃から臍ヘルニアが生ずる。3、4ヶ月は大きくなる傾向がある。この疾患は、ほとんどが自然治癒すること、鼠径ヘルニアと違い嵌屯が稀であることから早期治療の必要はない。寝返り、はいはいを始める生後4ヶ月頃に縮小が始まり、だいたい6ヶ月までに90%治癒、1歳で95%治癒する。

 

治療
 1歳までは自然治癒するので何もしない。 ばんそうこう固定は臍部皮膚のかぶれをつくるのでやらない傾向にあったが、最近、圧迫固定が皮膚の過伸長をおさえて、臍の形がよくなるという観点から、推奨するものもいる。私は勧めていない。
 1歳をすぎると外観はほとんど変らなくなる。ヘルニア門が開いたままのものは手術が必要である。ヘルニア門が閉鎖しても臍の皮膚の過剰なものも、美容的観点から手術が必要である。
 手術は、ヘルニア門を閉鎖するだけでは、臍のへこみがなくなる。臍のへこみをつくるため種々の臍形成術が考案されている。

臍ヘルニアの触診の仕方

 指で脱出した腸管を押し戻しながら、人差指の腹でヘルニア門の大きさを触診する。脱出した部分の大きさではなく、ヘルニア門の大きさを観察する。母親にも筋膜の切れ目を触らせて病態を納得させることが肝要である。

臍肉芽腫、臍ポリープ、尿膜管遺残

 臍脱後に臍に残る肉芽だが、3つの由来を考える。第1は、ごく一般的な臍帯が完全に脱落せずに残った臍帯由来のもの、いわゆる
臍肉芽腫である。第2は、腸管の組織由来の臍ポリープ(卵黄腸管遺残の1型)、第3は尿膜管遺残である。ほとんどは臍肉芽腫である。新生児期、臍にどす赤い肉芽が残り、じくじくしたり、こすれて出血したりする。大きいものは結紮、小さいものは硝酸銀焼灼をおこなう。臍ポリープは、かなり稀である。あまりに赤く、つるんとしてきれいなもの、なかなかなおらない肉芽は、これを疑う。臍ポリープは、硝酸銀焼灼しても治らない。手術的切除が必要である。尿膜管遺残も、稀で、新生児期というより、年長児でじくじくしているときはこれも考慮する。

 


 参考文献:
 松川泰廣他: 臍ポリープの肉眼的鑑別.日小外会誌 40: 545, 2004.
 松川泰廣 他: 臍ポリープ、臍肉芽腫の臨床像と鑑別診断.日小外会誌 46: 935-940, 2010.
 松川泰廣: 小児外科医Dr.まつかわの母親が気づきやすい気にしやすい子どもの病気と対応(第4回) 臍肉芽腫・臍ポリープ. こどもケア 6(5): 106-109, 2011.
 松川泰廣: 小児外科医Dr.まつかわの母親が気づきやすい気にしやすい子どもの病気と対応(第5回) でべそ(臍ヘルニア). こどもケア 6(6): 113-117, 2012.
 松川泰廣: 乳幼児健診Q&A おへそが出ているのですが治りますか?何かで押さえたほうがよいですか? 小児科診療 11: 63-66, 2012.
 松川泰廣: 臍肉芽腫:その血流と発生機序. 日小外会誌 48: 1001-1006, 2012.
 松川泰廣: 臍の発生機序からみた臍ヘルニアの臨床像と治療. 外来小児科 16, 202-206, 2013.

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